「mean aerodynamic chord」とは何か?
「mean aerodynamic chord」とは、日本語で「空力平均翼弦」と訳される用語です。
これは、主翼の形が矩形でなく、先細りや後退角があるような場合に、主翼全体を空気力学的に平均した仮想の翼弦のことを指します。
翼弦とは、主翼の前縁から後縁までの距離のことで、空気の流れに対して平行に測ります。
「mean aerodynamic chord」は、主翼の揚力やモーメントを計算する際に重要な役割を果たします。
主翼全体の圧力分布を、一つの揚力と「mean aerodynamic chord」の空力中心周りのモーメントに置き換えることができるからです。
また、「mean aerodynamic chord」の長さや位置は、飛行機の重心位置や安定性にも関係します。
「mean aerodynamic chord」の求め方
「mean aerodynamic chord」の長さは、以下の式で求めることができます。
ここで、は主翼の面積、は主翼のスパン(翼端間の距離)です。
「mean aerodynamic chord」の位置は、以下の式で求めることができます。
ここで、は主翼のスパン方向の座標、はの位置での翼弦長です。
これらの式は、主翼の形が複雑な場合にも適用できますが、計算が煩雑になる場合があります。
そのような場合には、コンピューターなどのツールを使って数値的に求めることができます。
「mean aerodynamic chord」の応用
「mean aerodynamic chord」は、飛行機の重心位置や安定性を評価する際によく使われます。
重心位置は、「mean aerodynamic chord」の前縁からの距離を「% MAC」として表すことが多いです。
例えば、重心位置が「mean aerodynamic chord」の前縁から25%の位置にある場合、25% MACと言います。
重心位置は、飛行機の飛行特性に大きな影響を与えます。
重心位置が前方にあると飛行機は安定しやすくなりますが、操縦性は低下します。
逆に、重心位置が後方にあると飛行機は不安定になりやすくなりますが、操縦性は向上します。
重心位置が適切な範囲内にあることは、飛行機の安全性や効率性にとって重要です。
「mean aerodynamic chord」は、飛行機の安定性を評価する際にも使われます。
安定性とは、飛行機が外乱によって傾いたりずれたりしたときに、元の状態に戻ろうとする力のことです。
安定性は、飛行機の重心位置や主翼の形、水平尾翼や垂直尾翼の大きさなどによって決まります。
安定性を評価する際には、「中立点」という概念が重要です。
中立点とは、重心位置がそこにあるときに、飛行機が中立的な安定性(つまり、外乱によって傾いたりずれたりしたときに、元の状態にも戻らないし、さらに傾いたりずれたりしない状態)になる位置のことです。
中立点は、「mean aerodynamic chord」の前縁からの距離を「% MAC」として表すことができます。
一般に、重心位置が中立点よりも前方にあると、飛行機は安定します。
逆に、重心位置が中立点よりも後方にあると、飛行機は不安定になります。
安定性は、重心位置と中立点の距離に比例します。
つまり、重心位置が中立点に近づくほど、安定性は低下します。
まとめ
「mean aerodynamic chord」は、主翼全体を空気力学的に平均した仮想の翼弦のことです。
主翼の揚力やモーメントを計算する際に重要な役割を果たします。
また、飛行機の重心位置や安定性を評価する際にもよく使われます。
重心位置や中立点は、「mean aerodynamic chord」の前縁からの距離を「% MAC」として表すことができます。
重心位置や中立点の位置によって、飛行機の飛行特性や安全性が大きく変わります。