北海道日本ハムファイターズの移転と札幌ドームに関する一連の動きは、地域スポーツ環境に大きな影響を与えています。
新庄剛志監督が率いるファイターズの好調なスタートや、エスコンフィールド北海道の成功とは対照的に、札幌ドームは現在非常に厳しい状況に直面しています。
そこで本記事では、
- ファイターズの新たな舞台となった北広島市の発展
- 札幌ドームの経済的な危機
に加え、これらの問題が地域のスポーツ文化や経済にどのような影響を及ぼすかについて詳しく掘り下げていきます。
- 日ハム移転で札幌ドームが危機
- エスコンフィールド北海道の成功
- 北広島市の再開発が加速
- コンサドーレの今後に影響
目次
札幌ドームの危機:命名権の売却失敗
新庄剛志監督が率いる北海道日本ハムファイターズは就任3年目に入り、開幕戦の勝利で良いスタートを切ったことで、監督の戦略に対する期待が高まっています。
一方、日ハムが新球場へ移転してしまったことで経営が困難になり、札幌ドームは逆境に立たされています。
札幌ドームは命名権の売却を試みましたが、申し込みが一件もなかったために募集期間を延長する状況です。
命名権の募集は2月29日までと設定されていましたが、応募が全くなかったため札幌ドームは契約が成立するまで募集を続けることを決めました。
札幌ドームは新しい名前で4月1日から新たにスタートしようと考えていたものの、結局は当初の希望通りには進まなかったようです。
募集の条件が厳しく、金額が高すぎるとの指摘もある中、札幌ドームは年間2億5000万円以上で2〜4年間の契約を希望していました。
各メディアもこの問題を取り上げており、
- 「命名権の応募がゼロだった」
- 「まさに自業自得」
などと冷ややかに報じています。
また、札幌ドームが直面している問題は単に命名権の募集だけでなく、施設全体の魅力の低下にも関連していると言えそうです。
エスコンフィールド北海道の成功
- 初年度売上251億円達成
- 北広島の再開発が加速
- 約90億円をかけ北広島新駅を整備
初年度売上251億円達成
北海道北広島市にある「エスコンフィールド北海道」は、2023年4月の開業以来、売上が順調であることが報告されました。
「北海道ボールパークFビレッジ」の運営元である「ファイターズスポーツ&エンターテイメント」は、
- 施設の初年度売上→251億円
- 2019年と比較して→93億円の増収を達成
と2月28日の報告会で明らかにしました。
さらに、初年度は346万人が訪れ、次年度には訪問者数を2倍以上の700万人に増やすことを目標に掲げています。
しかし、いくつか懸念点も指摘されています。
FビレッジとJR新札幌駅や新千歳空港を結ぶバス運賃が、運行コストの増加を理由に今年3月から値上げされました。
- Fビレッジから新札幌駅までの大人運賃が400円→600円
- 子ども運賃が200円→300円
また、Fビレッジから新千歳空港までの大人運賃は600円から1000円に、子ども運賃は300円から500円に上がりました。
(ただし、Fビレッジと北広島市を結ぶバス運賃は変わりません)
さらに、2年目にどれだけの来場者が戻ってくるか、球場内の飲食物の品揃えが来場者数にどのような影響を与えるかも、将来的な来場者数に影響を与える重要なポイントとなります。
北広島の再開発が加速:「トナリエ」の新設と北海道医療大学の移転計画
北広島市では、Fビレッジの盛況を受けて再開発プロジェクトが次々と進行しています。
特に注目されるのは、来年3月に開業予定の「tonarie(トナリエ)北広島」という商業施設の新設です。
tonarie(トナリエ)北広島
- 1階:地元の農産物を扱うフードマーケットや様々な飲食店
- 2階:パブリックビューイングスペースや飲食エリア
- 3階:美容院やネイルサロン、クリニック
- 4階以上:ホテルとして利用予定
- 駅直結のペデストリアンデッキを介してアクセスすることも可能
さらに、隣接地には14階建ての分譲マンションが2026年秋に完成予定で、北広島では他にも複数の再開発プロジェクトが計画されている状況です。
また、北海道医療大学は2028年4月にFビレッジへ移転することを決定し、
- 用地:Fビレッジ北側の駐車場を使用
- 敷地面積:約1万7700平方メートル
- 建設費:約420億円
と見積もられています。
大学は移転に関する方針として、
- 新キャンパスの設置
- 一部施設の当別町内残留
- 土地や建物の売却時の事前通知
- 両地域間の協議の継続
- 文化的損失への配慮
などを明らかにしており、この移転は学生数の減少と通学時間短縮を目指す戦略的な決定であるとされています。
約90億円をかけ北広島新駅を整備
北広島市の再開発の流れの中で、特に注目されているのが新設予定の「JR北広島新駅」です。
この新駅は、エスコンフィールド北海道からわずか徒歩4分の距離に位置し、現在のJR北広島駅から球場までの移動時間を約16分短縮できる見込みです。
しかし、JR北海道は当初80~90億円と見積もっていた建設費が、資材や人件費の上昇により、115~125億円に達する可能性があると昨年2月に市に報告しました。
この新駅は北広島市の要請による「請願駅」であり、市が費用を支払う必要があります。
そのため、市は費用削減を求め、JR北海道は建設地を北広島駅に近い場所へ約200m移動し、一部工事を省くことで最終的な工事費を85~90億円に抑えました。
新駅は2028年夏の開業を目指しています。
一方で、札幌ドームでは、King Gnuのツアーや4月のラグビー試合が予定されているものの、主に使用されている北海道コンサドーレ札幌以外での利用状況は良くないとされています。
解体を求める声もあるものの現実的でないとされていますが、札幌ドームの将来については引き続き懸念されています。
札幌ドームの危機
コンサドーレの成績不振が招く影響
札幌ドームは北海道日本ハムファイターズの移転後、想像以上に厳しい状況に直面しています。
赤字は予測を超えて拡大し、地元住民からは札幌ドームの解体を求める声も上がっています。
ただし、現時点ではサッカーJ1の北海道コンサドーレ札幌が札幌ドームをホームスタジアムとしているため、解体を進めるのは非現実的との見方が存在します。
しかし、コンサドーレが今シーズンJ1での成績不振に苦しんでおり、降格の危機にあることから将来的に札幌ドームの使用を見直す必要が出てくるかもしれません。
「昨シーズン主力選手が複数抜け、新たな補強も限定的だったためクラブの財政には厳しい影響が出ている。この中には札幌ドームの高い使用料も含まれている」とサッカージャーナリストは指摘しています。
また、2022年度のコンサドーレの財務報告によれば、試合開催費用がJ1で最も高額である一方、チケット収入はそのコストを上回る程度であり札幌ドーム使用の経済的負担が大きいことが示されています。
北海道日本ハムファイターズがエスコンフィールド北海道へ移転してからは、コンサドーレの試合が札幌ドームの主要な収入源となっていますが、その他のイベント収入は期待ほどではありません。
新たに導入されたイベント用「新モード」に対する需要も低く、広告収入が減少し、命名権の公募も成功していない状態です。
札幌ドーム側は状況を改善しようと努力していますが、前途は依然として不透明です。
札幌ドームの課題:コンサドーレのホームスタジアムとしての将来
札幌市議会議員の成田祐樹氏は、札幌ドームの赤字額について「予想よりもさらに3億円増えて4億円程度になるかもしれない。ただし、資金の余裕があるため、すぐに税金を投入する必要はない」と述べています。
加えて、コンサドーレ担当の記者は「札幌ドームの経営困難もさることながら、ピッチの芝の状態の悪さは重大な問題です。サッカーのトップリーグであるJ1の試合が行われるには、現状の芝の状態は適切ではなく選手の安全にも影響する恐れがあります」と指摘しています。
3月10日の浦和レッズとの試合ではピッチに茶色い部分が見られ、これが原因かは明らかではないものの浦和の選手が負傷交代を余儀なくされた事例もあります。
さらに、試合に出場した両チームの選手からは、芝の状態についての不満の声が上がっています。
Jリーグ選手の代理人は、「春先の気候が芝生の維持に影響を与えることは理解できますが、2001年の開場以来同じ方法で管理されているため、それを言い訳にすることはできません。選手が最良の環境でプレーできるようにすることは札幌ドーム側の責務です」と述べています。
札幌ドームでは、野球の際は人工芝が使用されますが、サッカーでは札幌ドーム外で育成された天然芝ステージが試合時に屋内に運び込まれます。この「ホヴァリングサッカーステージ」の維持には高額なコストがかかります。
札幌ドームの芝の悪い状態が続けば、いずれ本拠地としての価値はなくなるでしょう。選手やファン、関係者からは札幌ドームへの失望が感じられ、コンサドーレの試合を厚別公園競技場や他の会場で開催すべきという意見も出始めています。
厚別公園競技場はコンサドーレ創設期から使用してきた実績もあり、また宮の沢白い恋人サッカー場の改修を求める声も出てきているようです。
札幌ドームの危機:日本ハムの移転が引き起こす負の連鎖反応まとめ
札幌ドームの観戦環境に関しては、スタンドからの視界が良好とは言い難く、屋内であることが唯一のメリットとされています。
しかし、芝の質が悪いことに加え、チームの財政に負担をかける状況であれば、そこをホームスタジアムとして続ける理由は失われていくでしょう。コンサドーレのホームスタジアム移転の議論が加速する可能性も否定できません。
札幌ドームの管理運営側は、かつて北海道日本ハムファイターズが移転することを予測できず、その結果日本ハムは新しいスタジアムに移転しました。
現在、日本ハムと札幌ドームの状況は大きく異なります。もしコンサドーレに対しても同様の姿勢が取られれば、将来的に同じような事態が生じる可能性も十分考えられます。
札幌市とドームの運営側が真剣な対策を打ち出さなければ、将来的にプロスポーツ2チームを失ったことで悪い意味で歴史に名を残すことになるかもしれません。