今回は、年収500万円の人の手取り額が30年前と今とではどのように変化したのかについてお話しします。
年収500万円というと、平均的なサラリーマンの収入といえるでしょう。
しかし、年収が同じでも手取り額は必ずしも同じではありません。
手取り額には社会保険料や税金などが影響し、これらの負担は30年前と今とでは大きく変わっています。
では、具体的にどのように変わったのでしょうか。
ここでは、年収500万円の独身者と扶養家族がいる者の2つのケースを見ていきましょう。
独身者の場合
まず、独身者の場合です。
年収500万円の独身者の手取り額は、30年前と今とでは約19万円減少しています。
月の手取り額で考えると、約1.6万円減っています。
この減少の主な原因は社会保険料の上昇です。
社会保険料とは、国民年金保険料、健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料のことです。
これらの保険料は年収に応じて徴収され、30年前と比べると以下のように大きく上昇しています。
- 国民年金保険料:8000円から16950円に(2.1倍)
- 健康保険料:176220円から290772円に(1.6倍)
- 厚生年金保険料:261000円から450180円に(1.7倍)
- 雇用保険料:22500円から30000円に(1.3倍)
これらの社会保険料の上昇は、高齢化や少子化などの社会的な要因によるものです。
国民年金や厚生年金は現役世代が支払った保険料で、高齢者の年金を支払っています。
しかし、高齢者の人口が増え現役世代の人口が減ると、保険料の収入と年金の支出のバランスが崩れます。
そのため、保険料を引き上げる必要があります。
健康保険料も同様に、高齢者の医療費が増えることで保険料の負担が増しています。
雇用保険料は、失業者や就職困難者に対する給付や支援を行うために徴収されます。
雇用環境の変化や新型コロナウイルスの影響などで、雇用保険の給付や支援の需要が高まっています。
社会保険料の上昇に加えて税金の負担も変わっています。
税金とは所得税や住民税のことで、これらの税金は所得に応じて徴収されます。
30年前と比べると、以下のように変化しています。
- 所得税:156900円から79000円に(0.5倍)
- 住民税:101000円から167300円に(1.7倍)
所得税は国に納める税金です。
所得税は30年前と比べると減少しています。
これは、所得税の税率が下がったり、所得控除が増えたりしたためです。
所得控除とは所得から差し引くことができる金額のことで、所得控除が増えると課税される所得が減ります。
例えば、基礎控除は30年前は38万円でしたが、今は48万円になっています。
住民税は都道府県と市町村に納める税金です。
住民税は30年前と比べると増加しています。
これは、住民税の税率が上がったり、所得控除が減ったりしたためです。
住民税の税率は、平成19年に三位一体改革の一環として国から地方への税源移譲が行われました。
その結果、所得税の税率が下がり、住民税の税率が上がりました。
また、所得控除も所得税と住民税で異なります。
例えば、配偶者控除は所得税では38万円ですが、住民税では33万円です。
以上のように、社会保険料や税金の負担が変わったことで、年収500万円の独身者の手取り額は30年前と今とでは約19万円減少しています。
これは、年収の約4%に相当します。
扶養家族がいる場合
次に扶養家族がいる場合です。
年収500万円の扶養家族がいる者の手取り額は、30年前と今とでは約30万円減少しています。
月の手取り額で考えると、約2.5万円減っています。
この減少の主な原因も社会保険料の上昇です。
社会保険料は独身者の場合と同じく、30年前と比べると大きく上昇しています。
ただし、扶養家族がいる場合は健康保険料や厚生年金保険料が減額される場合があります。
これは、扶養家族の人数や年齢によって異なります。
ここでは、配偶者と高校生の子供一人がいる場合を例にします。
- 国民年金保険料:8000円から16950円に(2.1倍)
- 健康保険料:176220円から281670円に(1.6倍)
- 厚生年金保険料:261000円から450180円に(1.7倍)
- 雇用保険料:22500円から17500円に(0.8倍)
雇用保険料は、扶養家族がいる場合は独身者の場合よりも少なくなります。
これは、扶養家族の人数に応じて雇用保険料の率が下がるためです。
例えば、扶養家族が一人の場合は、雇用保険料の率が0.3ポイント下がります。
社会保険料の上昇に加えて、税金の負担も変わっています。
税金は、独身者の場合と同じく所得税と住民税です。
これらの税金は、30年前と比べると以下のように変化しています。
- 所得税:156900円から79000円に(0.5倍)
- 住民税:101000円から167300円に(1.7倍)
所得税や住民税の変化の理由は、独身者の場合と同じです。
ただし、扶養家族がいる場合は所得控除が増えます。
所得控除とは所得から差し引くことができる金額のことで、所得控除が増えると課税される所得が減ります。
例えば、配偶者控除は所得税では38万円ですが、住民税では33万円です。
また、扶養控除は所得税では38万円ですが、住民税では63万円です。
さらに、子供の教育費などの特別控除もあります。
以上のように、社会保険料や税金の負担が変わったことで、年収500万円の扶養家族がいる者の手取り額は30年前と今とでは約30万円減少しています。
これは、年収の約6%に相当します。
まとめ
年収500万円でも手取り額は30年前と大きく変わったことがわかりました。
社会保険料や税金の負担が増えたことが主な原因です。
これらの負担は、社会的な要因や政策的な要因によって変化しています。
手取り額の減少は、生活水準や貯蓄率に影響を与える可能性があります。
自分の収入と支出のバランスを見直すことが大切です。
また、将来の社会保障制度や税制の動向にも注目しておく必要があります。