政府は、物価高に対応するために、低所得世帯向けの給付金に18歳以下の子ども1人当たり5万円を追加することを検討しています。
これは、子育て中の低所得世帯への支援を手厚くし、子どもを安心して育てられる環境整備につなげたいという政府の考えですが、本当に効果的な対策なのでしょうか?
私はこの給付金追加には疑問を感じます。以下に、その理由を述べたいと思います。
- 財源の問題
- 効果の問題
- 対象の問題
財源の問題
まず、給付金追加の財源は、2023年度予算の予備費を活用するということですが、これは国債発行による借金で賄われるということです。
すでに巨額の財政赤字が続いている日本にとって、さらに借金を増やすことは将来の財政危機を招く恐れがあります。
また、国債発行による財政出動は、経済の潜在成長率を低下させるという研究もあります。
つまり、給付金追加は短期的な所得支援にはなるかもしれませんが、長期的な経済成長にはマイナスになる可能性があるのです。
効果の問題
次に給付金追加の効果についてですが、これも限定的だと考えられます。
給付金は一時的な所得増加に過ぎず、消費に回るかどうかは不確実です。
実際、過去のコロナ対策で行われた給付金は貯蓄に回る割合が高く、消費にはあまり寄与しなかったという分析もあります。
また、給付金は物価高による所得の実質的な減少を補填するものではありません。
物価高に対応するには物価上昇率を上回る賃金上昇が必要ですが、給付金は賃金上昇には直接的には影響しません。
むしろ、給付金によって消費者の需要が一時的に増えることで、物価上昇圧力が強まる可能性もあります。
対象の問題
さらに、給付金追加の対象についても問題があります。
政府は所得税と住民税が非課税の世帯に加え、所得税は非課税で住民税のうち所得にかかわらず一定額を納める「均等割」だけ課されている世帯も対象にするとしていますが、これは所得水準に関係なく子どもの数に応じて給付金を支給するということです。
しかし、物価高の影響は所得水準によって異なります。
低所得世帯は食料品やエネルギーなどの必需品に比較的多くの所得を割いており、その価格上昇による打撃は大きいです。
一方、高所得世帯は必需品以外の消費にも多くの所得を割いており、物価上昇の影響は相対的に小さいです。
したがって、物価高に対応する給付金は所得水準に応じて差別化するべきだと考えられます。
結論
以上のように、政府の給付金追加は財源の問題、効果の問題、対象の問題があり、本当に必要な対策とは言えません。
物価高に対応するには、経済の潜在成長率を高め、賃金上昇を促すことが重要です。
そのためには、科学技術・イノベーション、スタートアップ、DXなどの成長分野への投資や改革を進めることが必要です。
また、子育て世帯への支援も一時的な給付金ではなく、保育・教育の充実や仕事と家庭の両立の支援など持続的なものであるべきです。
政府は短期的な人気取りではなく、長期的な経済社会の発展につながる政策を打ち出すべきです。